1.背景および目的
三宅島では現在も火山ガスの流出が続いており、火山ガスに強い作物とともに腐食に強いハウス資材の選定が不可欠となっている。このため、帰島後の補助事業導入をふまえ、火山ガス等に強いと思われる防腐食性ハウス資材「ZAM」を設置し、その実用性について検討する。
2.方 法
三宅島で従来から使用されていたパイプハウス骨材(ZA)1種類と、防腐食加工した骨材(ZAM)2種類および各付属金物(ジョイント等)を供試し、これら3種類の資材とビニル被覆の有無により6処理区を試験区として設定した(表1、図1)。これらの資材を4月1日に、火山ガス発生程度の異なる島内3地点(伊豆地区、阿古地区、坪田地区)へ井げた状に組んで設置し、各資材の腐食程度(白さびおよび赤さびの発生程度:0〜8段階)を月1回、目視により調査した。
3.これまでの結果
1) 5月から9月までの各試験区における横パイプおよび縦パイプの腐食程度をそれぞれ図2、3に示した。腐食の発生初期に現れる白さびが資材設置2ヶ月後から早くも発生し始め、9月まで徐々に進行した。
2) 各地区における資材の白さび発生程度を比較すると、阿古地区で最も高く、坪田、伊豆地区の順に高かった。本年4月以降の火山ガスの発生程度も阿古地区で多く、坪田、伊豆地区では比較的少なく、各地区の白さび発生状況は火山ガスの発生程度(データとりまとめ中)とほぼ一致している。
3) いずれの地区においても、ビニル被覆区では無被覆区に比べて白さびの発生が極めて多く、白さびの発生には資材周辺の湿度の影響が大きいことが示唆された。ビニル被覆区では降雨によりビニル内部の湿度が高く維持されるとともに、二酸化硫黄ガス等が溶けた雨水(酸性雨)の滞留により腐食が進行することが考えられる。
4) 資材別の腐食程度を比較すると、ZA(慣行資材)区で白さびの発生がやや多いものもあるが、全般的に現段階ではまだ白さびによる資材別の腐食程度に大きな差はみられていない。同様にZAM区におけるパイプの太さの違い(25oと49o)による白さび発生程度も大差はない。ただし、無被覆のZA区ではパイプ管端(切断面)のビード部(接合部)から赤さびの初期発生が確認され、白さびの腐食進行に続く赤さびの発生がみられ始めた(図4)。これにより、今後ZA区はZAM区に比べて赤さびによる腐食が早く進行する可能性がある。
4.今後の予定
各地区における資材の腐食程度(白さび、赤さびの発生程度)を継続して調査するとともに、火山ガス発生程度や気象条件(気温、降水量等)、酸性雨、ビニル被覆による湿度変化等と腐食程度との関係について検討する。
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